あずみ

 「時代劇をスタイリッシュに!」
 公開当時、予告を見た時から血糊の表現が大袈裟という印象があって、狙ってやっているのかなとも思っていたけど、やはりそうだった。極めてクリアに真っ赤な血、血しぶき、大量の流血。リアルさよりも見せ重視。アクションシーンにしてもそう。ここぞという時にやるからカッコ良く決まるはずの粋な演出を、この作品は始めから終わりまでぶっ続け。確かにカッコいい。でも斬新かというと少し疑問。カメラワークとかも確かに奇抜ではあったけど、定石どおりの見せ方をしないというだけで、お遊びレベルというか、作品としても(邦画で)B級のノリを大作並みに作ってみたらどうかって止まりの印象でしかなかった。それはそれで面白いと思うけど、ただそれも特に目新しい試みでもないし、期待してたものとはちょっと違った。
 ストーリーも何だかちぐはぐだったけど、面白かったのは野盗の使い方。イカレ三兄弟とか。濃いキャラがいい。で、やられる時はあっさり。惜しいね。最後のクライマックスでの、あずみと戦う野盗どもが嬉しそうにはしゃいでいるのとかも面白かった。原田芳雄演じる爺が傷を負いながら戦い続ける姿に、それに相対する者たちがびびりまくってるシーンと対照的。血に飢えた者たちの狂気というのか、その辺の描写は妙にリアルだった。自ら望んで斬る者たちと、望まずとも斬ることでしか生きられない者たちという対比であずみたちがいるようにも思えた。で、好んで人を斬る、狂気のど真ん中に位置するのが美女丸(オダギリジョー)というわけだけど、敵としてはある意味王道のキャラだし、存在感があったというより、このキャラがいなかったら物語の柱が一本欠けてたくらいに当然の存在として、まさに話に華をそえていた。他に気に入ったキャラは飛猿。これが結構憎めないキャラなんだよな。腕も立つように見えたので、斬り合いではなかった最期が残念。まああれで死んだとは思えないけど。奴は絶対生きてる。
 上戸彩の演技に関しては特になし。とりわけ上手くもなく、下手でもなく。というか、彼女を海外の人が見たら、ほんとに子供が刀を握って人殺しをしてるよ、と思うんだろうな。「少女にして刺客」は、むしろ海外受け。
 ところで、あずみの二百人斬り、ほんとに二百人斬ってた? 爺たちが斬った数も含めて二百人ってこと? まあいちいち数えてないからいいんだけど、あのシーンを映画史上初とか宣伝するより、もっと別の宣伝の仕方があるんじゃないのとは思った。作品全体としてはどうかなって思うけど、細かいところでは面白い部分があった、見どころはあったし。
 最後に、いろいろキザな台詞のあった本作品で、最も実感できた台詞。誰彼構わず斬り始めた美女丸に、野盗が思わず吐いた言葉。あの場にいたら、自分もたぶん同じことを言っていた(斬られ役)。
「何なんだ、てめえはよ!」