松井を敬遠した男。その夏、甲子園。星稜の強打者松井を5打席連続敬遠した投手は、12年後のいま、アメリカの独立リーグで野手としてプロの野球選手となった。
 これだけでドラマを感じる筋立てだけど、光あれば影もある、汚名も常に付きまとっただろうし、本人はどれだけ苦しんだか知れない。それでも野球で生きることを選ぶ。野球しかないとも言える。念願のプロ入りが決まった瞬間も本人は比較的冷静だった。「(メジャーにいる松井に)あと一歩のところまで近づいた。その一歩が大変ではあるけど…」という言葉とか、胸を打つものがあった。上っ面だけじゃない、重みがある。本人の意志ではないとはいえ、かつて松井を避けた男はいま松井に真っ向から向き合っている。メジャーは正直厳しいだろうけど、頑張って欲しいと思うし、夢を追う意味とか生き様とか共感できて考えさせるものがあった。