#9「一人ぼっちのマウンド」

 吾郎の苦いデビュー戦。どんなに才能があろうと、どんなに技術を持っていようと、やはり子供は子供。ずっとひとりで練習してきた吾郎はチームプレーも知らない。現実を知る、そういう意味で大人相手の試合を最初にぶつけてきたわけね。酷かも知れない、でもこんなことでダメになるようでは先もない、という桃子先生の言葉が胸を打つ。本田親子と出会って多少は知ったと思うけど、桃子先生だって野球は詳しくないはず。それでも吾郎のどこがダメで、どこが良いか分かっている。さらにそれをすぐに指摘しないで、少し突き放したような見守り方が、桃子先生の母親ぶりがすっかり板に付いている感じで出ていて良かった。ふらーっと見に来て、監督より存在感あったしね。
 小森がまた良かった。常に冷静っていうか、一歩引いたところで見ていて、悪く言えば自分を出さないから周りがよく見える。すぐ熱くなる吾郎とまさに対照的。脱線しがちな吾郎をさり気なくリードしていく感じ? これまたいい女房役っぷりで、対吾郎の正捕手の座は不動のものとしたかな。
 おとさんが半主役の座を降りたと思ったら、今度は桃子先生、小森と、あくまで主役は吾郎だけど、それを支える視点に厚みがあるのもいい。