(再) #16「暁の蛇」

  くしゃみや腹が鳴るのに驚くさよがたまらなく可笑しかった。そういや、身体的な現象を忘れることは実際にあるんだろうか。身近な人間を忘れる、飯を食ったことを忘れる、飯の作り方を忘れるというのはあるだろうし、感覚として分かるけれども、そういったこととは違うような気もするし。
  記憶を失っても人は生きてゆける。記憶は無くても、体が、感覚が覚えている。切なくも可笑しい。可笑しくも切ない。味わいのある話だった。