#15「ミノムシ」

  豊かな想像力から生み出された静流力作の作品集「萌」。おお、ほんとにそれを拝めるとは思わなんだ。実は妄想はかけらも入ってなくて、ひたすら写実的でリアルな筆致であるらしいと窺えるのが可笑しいけど、それも静流らしくて笑った。まあ、見たまんまを臨場感を持って文字で再現できるというのもひとつの才能なんだし、作品集を多く人の目に触れさせれば、静流の能力を真に受け止めてくれる人もきっと現れるだろうよ。というか、この物語そのものが静流の書いたもの、そういう静流の目線を通したものでもあるように思えた今回の話だった。前回の瑞生の話の後だと、見えないものが見えることや、そのことをどう捉えてどう付き合っていくのか、瑞生以上に真剣に向き合っている静流のほうが、逆に一歩を踏み出せなくて、瑞生や友人など他者に依存しているように見えるのが面白いところ。