#12「脳髄の事」

 誰もが勝手に物語を作って(持って)しまった。それでさらに事態は悪化した。この辺のあるある感というか、むしろ好意から動いているはずの人間たちが陥りやすい綾を浮き彫りにするのが上手いねえ。それが一気にほどけてゆく様は、ほんと気持ちよく落とされている感覚。事態をややこしくするのに、関口もしっかり一枚噛んでいたってのも笑ったし。読者に年頃の娘がいたというのは関口も意外だったろうし、頼子だって、と何時だかの二人のやり取りが蘇って思い出し笑い。関口が書いたと知ったら、加菜子を見るように目を輝かせたのか、あるいはこんな人が書いた世界なのか、気持ち悪いと手の平を返したか。