#1「広い世界へ・・・」

 12歳のクラウと父親の関係を丁寧に描きながら、いきなり10年後というのには面食らった。前半部分だけ見てたら、何らかの存在に乗っ取られた娘を取り戻すという、父と娘の物語になるのかと思ったよ。終わってみればリナクスの視点が中心になるということらしい。娘を案じる父親の感情はどこに消えたんだ?
 そのいきなり10年後の展開に限らず、全体的に余計な説明を挟まず、テンポ良く進んでいくので非常に見やすいし、適度にSFの要素も見せていて、感触としてはいい。悪くすれば、雰囲気だけになるおそれもあるけれど。
 まあとにかく初回は、川澄綾子の独り舞台だった。12歳のクラウ、クラウの体を乗っ取ったリナクス、リナクスの中に時々現われるクラウ。また、リナクスがクラウの父親との関係を大事にしている描写があるように、クラウとリナクスを単純に切り離せない面が出来つつあるようにも思わせる。さらには、リナクスが対と呼んでいる存在がまたいるわけだし。一個の個体の中での複雑な関係性を軸に話を転がしていくようでもあるし。最初、12歳のクラウの声は随分大人っぽいなと思ったけど、通して聴けば違和感なかった。特に、「お帰り」と「ただいま」のトーンの落差とか、川澄さんならではという感じ。