#2「空蝉」

  内容的にもサブタイトル的にもひと夏の幻のような出来事ではあったけど、一陣の風が吹きぬける秋を思わせる話でもあった。それが愚かなこと、偽りと知りつつ、どうしようもなくなにかにすがりたくなるとき、夢を見たくなるときがある。お登世をめぐるふたつのすれ違いかな。慶次郎とは意地の張り合いに近いところがあるけど、最後のほうで久しぶりに花ごろもを訪れた慶次郎が蝉の抜け殻を何食わぬ顔で踏み潰すのに笑った。お登世はじきに消えてなくなりますと言ってたのに。嫉妬を覚えるくらい、ほんとは気が気じゃなかったってことだな。お登世も名残惜しそうな表情を見せたけど、まあこうすることで夢から覚めたってことになる。