#4「蜩」

  蝉はただ精一杯鳴くだけ。生きるが勝ちどころか、生きるという意識すら持たず。まあ確かに生きてるって実感のあるときは生きるとかごちゃごちゃ考えていないもんだよな。ごちゃごちゃ考える前に、「生きろ」ってか。吉次の妹夫婦の養子話はまだやってなかったけ。鼻つまみな兄のせいで苦労させられながら、その兄のおかげで今の生活があるという負い目。吉次と妹の切りようにも切れない関係はこの作品の味わいのひとつ。仲の良い兄妹とかひと括りにできない関係を描き出しているところがお見事。何ヶ月ぶりに戻ってみれば、部屋が元のまんまというのがいいね。やっぱここが一番だ、って表情の吉次の安堵感が伝わってくるようだった。