#28「拾われた手紙」

  ネズミは、いやマリウスは見た。教会でジャンに手紙を渡しているところのアゼルマに、アゼルマがこんなんじゃ、エポニーヌは相当苦労してきたのだろうなとしのばれて泣けた。父親がますます堕落しているのに比べても、健気にぎりぎりのところで踏みとどまっている気がして。本当の私はこんなはずじゃないという気持ちがそうさせているのだとしたら、虚栄心もあながち見苦しいものじゃないのかもと思ったり。