#2「さよなら、母さん」

  死ぬと決めた後に親に会いに行ける勇気、自分にはないよなあ。そんなきっちりけじめを付ける勇気があるなら、まだだらだらと生き延びるほうを選ぶに違いない。帰ってきた息子を普通に出迎えているようで認知症とも思える様子とか、ボケているようで何でも見透かしているような、分かっているような様子とか、加藤治子さんがまたそういう老いた母親像に適役で良かった。最後の別れのつもりじゃなくても、親のこういう姿を見せられるほうはたまらないよ。泣くほどでもなかったけど、つらいものがあった。変にもったいぶらずに淡々と描いているのもよかった。そして、そんな親を見ても、決意の変わらない喜多善男。絶望の後に達した彼の境地はどれほどのものなのか。ネガティブ善男が現れる場面は凄みがあるね。