#17「スダマガエシ」

  「自分を持ってんのか?」。「こいつは聞こえねえふり決めてんのさ」。自分というものや、他者との関わりを持たなければ魍魎に同じ。この作品にやたらのめり込んでいる自分自身も含めて、痛々しいほど問われている心地だった。アヤカシは己の写し鏡でもあり、アヤカシが畏怖の対象となるのはそういう問い返しとしての側面もあるからなんだろうな。瑞生は十二分に個性的だと思うけど、何でも瑞生の真似をしたがる年下の子をぶつけて瑞生の内面をあらためて浮き彫りにするところも面白いし、爺ちゃんに調伏されても一切慌てないどころか、囚われの身となったのはどちらだと問うアヤカシの描写も秀逸だった。瑞生への調伏というか、御目玉兼愛情のゲンコツ一発も、爺ちゃんらしくて笑った。いやもうほんと非の打ち所のない濃さだ。