#12「西へ!」
 「人はいつまでも同じところにはいられない」
 生きる中で人は変わってゆく、変わらざるを得ないことを、今後の勇たちの変容の暗示も含めて表現する。「かっちゃん、私のことが好きだったでしょ。私も好きだった」とおみつがさりげなく言って、勇が驚いたり。京に向け、伝通院を出発するシーンで、おつねが見送る。話したいことはたくさんあるのに、多くは言葉を交わせなかった。また、それをおみつが見てる。何とも切なくなるシーンが多かったな、今回は。
 粕谷新五郎と芹沢鴨一派が呑み屋で一触即発。粕谷に助太刀して、腕前を披露しつつ、ピリピリムードを軽くかわす総司の性格がいいね。粕谷新五郎って何者なんだろうと調べたら、芹沢鴨と同じ水戸藩脱藩浪士だって。どちらかというと近い立場にいるはずの粕谷と芹沢を対立させる。浪士組が一枚岩でないことの一端を表しているのだろうけど、しこりを生ませて、話的に何を狙っているのやら。史実の捨助のことも、本編終了後の解説ではじめて知った。三谷流味付けをとくと味わう。



#13「芹沢鴨、爆発」
 先番宿割を仰せつかり、てんてこ舞いの勇。途方に暮れるばかりの勇と、てきぱきと物事を処理していく歳三の違いが面白い。向き不向きがあるとはいえ、お人好しだけじゃ物事は立ち行かない。勇のダメっぷりがいい。
 鴨には鳥小屋がお似合い。いやあ思わず笑った。で、ほんとに鳥小屋の中に入っちゃうし。自己中で揉め事を起こしてばかりなんだけど、意地になる子供っぽさとか、斜に構えたところとか、この人も見てて飽きない人物だ。粕谷新五郎によれば、ただのあばれ馬じゃない、浪士組の中で使える人間、使えない人間を見極めている、という。その言葉どおり、芹沢の好き勝手を治めた近藤勇の名が結果的に知れ渡ることに。歳三も勇がここまでの男とは思ってなかった感じ。ただのお人好しじゃ、人望は集まらない。勇は決して器の小さい者ではないってことか。