SCE ASIN:B0002HUCNQ

 クリア。以下、ネタばれ。
 いやあ、最後は騙された。たとえ影の女王が死んでも、少女は城から出ることができない。その言葉どおりのエンディングなのかと思って、悲しくて、エンドロールを見ながら思わず泣いてしまったよ。何のために少女の手を引いて駆けずり回ったのか。何のために城から脱出しようとしたのか。少女の手を引いた感覚(振動がブルッと来る感覚)だけが後に残るような、プレイヤーに虚脱感を感じさせる巧いやり方だね。であるからこそ、少女は無事だったという最後のオチに、ああ良かったと心から実感できる作りになっている。ただ、たぶん少女を救えないまま終わっても自分は納得したと思う。少女の物悲しさがよく感じられる作品として。世界観や展開にほとんど説明のない作品でもあるから、ハッピーエンドではないほうが謎が後を引いて良かったかも知れない。
 それにしても、城が崩壊する中、イコひとりを舟に乗せて逃がすシーンの時もそうだったけど、少女の意味不明の言葉がいろいろな意味に聴こえてくるのがとても不思議だった。ある程度シチュエーションが決まっている場面でこういう台詞を言うだろうというのはもちろん人それぞれ違うのだけど、自分の中でも幾通りかの台詞が浮かんできて、どの台詞が一番合っているかと想像できる気持ちよさがこの作品にはあった。イコと少女の間の、手をつなぎつながれることでの会話、言葉が通じない故に言葉で表現されない会話など、ビジュアルが進化しても想像力を働かせながら楽しめる余地はまだまだあることも教えてくれる。
 イコの角が2本とも折れた描写について、あれは生贄からの解放という意味でいいのかな。城が崩壊し生贄を差し出す必要がなくなるのだからそれでいいじゃないという気もするけど、角があるというだけで生贄にされていたなら、その象徴を取り除いて自由の身にしてやるということかもね。それは影に束縛されていた少女も同じだし。ああ、そうだ、影の女王は少女のことをヨルダと呼んでいたっけ。でも、イコと少女の間に名前なんて必要ないね。
 さて、エンディング後のセーブ時の表示では、合計プレイ時間は6時間ちょっと。思ったより短い? まあその気軽さが丁度いいとしよう。難易度も一般的にはぬるいほうかなと思うけど、自分には適度だった。再廉価版でコストパフォーマンスも上々。すでに名作として押しも押されぬ評価の作品なわけだし、当然の結果とも言えるけど、良かった。この作品の肝でもある感覚を自分の手で確かめるだけの価値はあった。